マネージャーブログ
Oct 22, 2008
市場価格の乱高下対策もスロースモールな視点で
経済小説『エネルギー』の著者黒木亮氏は、リーマンブラザースの破綻を受けて、原油価格(WTI先物)は年末にかけて50ドルを切ってもおかしくない、と予想した(週刊現代10月4日号)。確かに一時140ドル台をつけた原油価格は、ここにきて70ドル前後と半値まで落ちてきている。
原油の「井戸元コスト」と呼ばれる生産原価は、現状11ドル89セントに過ぎないという。で、あれば昨年来の原油価格の高騰はやはり投機筋のつくったバブルということか。
黒木氏は、このバブルの原因を「経済のマネーゲーム化」だと指摘する。70年代後半から米国で金融自由化が行われ、金融機関は金融工学を取り入れ、オプションやABS(資産担保付証券の一種)など様々な商品を作った。90年代に入ってそれらが原油や穀物にいった商品市場に持ち込まれて価格の変動性を一気に高めた。商品市場は通貨や株式、債券などに比べると極めて小さな市場のため、価格操作が容易で、なんでもありの「ジャングル市場」になっている。また、「資源パラノイア」と化した中国が世界中で油田とガス田の権益を買い漁っていることも石油価格高騰の原因だというのが、黒木氏の説明だ。
米国サブプライムローンに端を発した世界的金融破綻が、株式市場などから流れ込んでいた石油市場への金の流れを引き揚げさせ、原油価格が落ち着きを取り戻したということだろう。
しかし長期的には、いままで7億〜8億人の先進国人口を満たすためだけの資源需要が、今後30億〜40億人の新興国需要をも満たたしていくことになれば、当然石油に限らず、鉱物資源や食糧資源も供給不足、価格高騰が予想される。その際、投機バブルによる高騰ではなく、有限な資源の希少性を反映した価格の上昇は、本来不必要な需要を抑え、再生可能な資源へのシフトを促進する意味で重要である。原油価格であれば、あまり低い価格より100ドル前後の価格のほうが、将来必要な再生可能エネルギーへの転換を促すという観点からは適正だと思える。
ジャングル市場の資源価格の乱高下に一喜一憂するよりは、国内なり地域において最低限必要な資源の自給水準を確保し、小さな市場で長期に安定的な価格での取引を可能にしていく方向を考えたい。
今回の欧米の金融機関の破綻で、日本の金融機関は優秀な人材や海外の有望市場を獲得できる千載一遇のチャンスを得たとも言われている。この際日本の金融機関に期待したいのは、いままでの金融工学を駆使したマネーゲーム化の方向ではなく、日本の株式市場、商品市場をはじめとして市場や金融商品の健全性や信頼性を高める方向で、その優秀な人材等を活用するということである。
超長期的には、50年〜100年単位で恐慌と呼ばれる水準も含む景気循環の波はおとずれる。そのとき戦争という愚かな選択肢ではなく、貧困の撲滅や再生可能資源の開発普及といった方向で市場や金融のシステムが機能できるよう、改革が進められることを期待したい。
そうした市場・金融システムの改革、資源価格高騰時代に対応した経済対策には、長期的視点に立った抜本的な政策転換とそのための政治的リーダーシップが必要だ。日本の場合、自公政権の長期化による政治不信が市場・金融システムへの不信を増幅している面がある。バブル議員延命のための小手先のバラマキ景気対策は財政危機の深刻化に拍車をかけて後に禍根を残すだけである。まずは、早期解散という麻生首相の政治的リーダーシップを期待したい。たぶん、それが最大の景気対策になる。